発達障害

発達障害について

生まれついての脳機能(認知)障害

脳機能の発達に関係しています。多くの場合、幼児の時期からその傾向が現れるようになります。したがって精神疾患というわけではありません。 特徴としては人と話すことができない、協調できないといった社会性に問題が出るなどして、周囲とコミュニケーションをとることが困難となって、社会に適応するのが難しくなっていきます。

発達障害の種類

行動や認知の特性によって、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠乏多動症(ADHD)、学習障害(LD)の3つに分類され、どのタイプにしても脳の一部機能に障害がみられます。
一部とは認知機能(記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などをする機能)のことで、発達障害の患者様の脳は、この認知機能が偏っていると言われています。
そのため、ある分野においては優れた能力を発揮するものの、違う分野においては極端すぎるほど苦手という場面がみられ、その落差は日常生活に支障をきたすほどになります。

発達障害の原因

認知機能に障害が起こる原因は主に2つあるとされています。ひとつは遺伝的素因で、この場合はもって生まれたものが大きく関係していると言われています。もうひとつが環境的要因で、これはいじめや虐待といった人間関係の中で発生したとされるストレスが脳の働きによって影響したのではないかと考えられているものです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、「広汎性発達障害」、「アスペルガー症候群」などをひとつにまとめた呼び名になります。同障害は、1歳頃から症状が出始めるとされ、幼児期に保護者などが気づくケースが大半ですが、成人になって発見されることもあります。

自閉スペクトラム症では、コミュニケーションの障害、限定的な興味や活動、反復的な行動がみられるようになります。
小児の場合は「人の目を見ることが少ない」「指さしをしない」「他の子どもに関心がない」といった様子がみられ、対人関係に関連するとされるこれらの行動は、通常の子どもなら急激に伸びていきますが、ASDの子どもでは明確に変化しません。また保育園や幼稚園に入園後も、一人で遊んでいることが多く、集団行動も苦手な様子が見受けられるなど、人との関わり方も独特です。

思春期以降の患者様にも共通するのは「相手の立場になって考えることが苦手」「冗談が理解できず言葉の文字通りに解釈する」「興味のあることのみを一方的に話し続けて会話が成立しにくい」といったことが起こり、相手との距離感がつかめず困難を招くことがあります。
その一方で、自分の興味のある対象には毎日何時間でも没頭します。強いこだわりから、初めてのことや決まっていたことの変更は苦手なため、それらに対応するのに時間がかかることがあります。

治療について

自閉スペクトラム症を完治させる治療法は確立していません。そのため、症状を抑える薬物療法や行動を変える行動療法などを行っていきます。

小児の患者様の場合はASDと診断されても、個別または小集団による療育で、コミュニケーションの発達を促し、適応力を伸ばしていきます。また、新しい場面に対する不安が減少していくようになるので、集団活動への参加意欲も高まるようになります。

思春期以降の患者様では、まず過度なストレスや生活上の変化の有無について調べていき、原因が判明すれば環境を調整していくようにします。その上で、不安やうつの症状がみられる場合は、抗不安薬や抗うつ薬を使用していきます。

注意欠如・多動性障害(ADHD)

ADHDも脳機能障害のひとつで、多動性や衝動性もしくは不注意といった症状がみられている場合に、注意欠如・多動性障害(ADHD)と診断されます。症状を放置したままでは生活に支障がみられるようになります。
発症の原因については特定されていませんが、脳内の神経伝達物質のひとつであるノルアドレナリンが不足することで起きるのではないかと言われています。
ADHDについては、タイプ別に「不注意」「多動」「衝動性」に分類されます。

不注意とは

日常生活に支障をきたすほど、集中することができないもしくは続かない、忘れ物やなくし物が多い、約束事が守れないといったものです。
具体的には勉強や仕事でうっかりミスが多い、課題や宿題などで集中が続かない、話しかけられても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやり遂げられない、課題や作業の段取りを組むのが下手、整理整頓が苦手、計画を立てることや順序立てて行うことが苦手、といった様子がみられます。

多動について

落ち着きがない、待てないなどの特性があります。
具体的にはじっとしていられず席を離れる、早口なおしゃべりを続ける、人の話が終わる前に話しを始めてしまう、座っていても手足をもじもじする、おとなしく遊んでいられないという様子がみられます。成人の場合は多動性の症状が出ることは、ほぼありません。

衝動性

相手の話を待てない、予測や考えなしに思いついたまま行動するといった様子がみられます。

治療について

薬物療法や行動療法、生活環境の調整などが行われます。

薬物療法では、脳内の神経伝達物質(ノルアドレナリン)の不足が指摘されているため、これを改善する内服薬が用いられます。
行動療法は、望ましい行動をした際に報酬を与えたり褒めるなどして、問題行動を抑制していこうとする試みになります。

また生活環境の調整では、作業に集中する必要がある場合は、周囲の関係ないものを片づけたり、テレビを消すなど、集中を妨げる刺激をできるだけ周囲からなくしていきます。また、集中する時間が短いため、こまめに休憩をとるなどして一度にこなす量は少なめにし、休憩をとるタイミングもあらかじめ決めておくと効果的です。

学習障害(LD)

知的発達にはこれといった問題はないものの、読む・書く・計算するといった中の特定の事柄のみに困難が認められる状態をいい、それにより学業成績が上がらないどころか、日常生活に支障をきたしている状態を言います。
学習障害は、上記で触れた能力が要求されるようになる小学校2~4年生頃に成績不振といったことが判明されることでわかるようになります。このような状態が続けば、学業に意欲を失うだけでなく、自信をなくしてしまうことも考えられます。

治療について

学習障害の場合は根本的な治療法が確立していないため、苦手分野に応じた工夫や適切な指導などの教育的な支援が有効です。

患者様が抱えている困難を家庭でも学校でも理解し、成績不振の理由を怠慢と決めつけず、一緒に行ったり、達成した場合には褒めるなどで自信や意欲の向上と困難の軽減につながるよう、一人一人の特性に合わせてどのような支援策が有効かといった情報を共有していくことも大切です。

不安やうつなど精神的な症状がみられる場合は、抗不安薬や抗うつ薬による薬物療法を行います。
思春期以降の患者様では、カウンセリングや環境調整などによって負担の軽減を試みます。

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